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(仮)執事物語

第4章 冬の蛍〔黒崎〕


「恵里奈ちゃんは他に我侭を言う人じゃないのは俺が一番知っているから……。俺にだけだよね? 恵里奈ちゃんが我侭を言うのって」

そう言いながら黒崎さんは、私の頭に何度も頬擦りする。

「君の我侭を叶えるのは、俺の“特権”だから……。これからも沢山、我侭を言ってくれていいんだよ?」

「お兄ちゃん……」

「君が俺の困った顔が好きなのも知ってるから……って俺って自惚れてるかな?」

そう言うと黒崎さんは私の顔を覗き込む。

真っ直ぐで正直な瞳。

その瞳で見つめられると、何だか心の奥まで見透かされているようで、恥ずかしくなる。

だって、私が黒崎さんの困り顔が好きな事を彼は知っていたのだから。

それを悟らせないようにしてくれていたのは、彼の大人の優しさなのだと思ったら、ますます黒崎さんの事が好きになる。

「もっと自惚れて? 私……お兄ちゃんの事、全部大好きだから……」

私がそう告げると、黒崎さんの目が優しく細められる。

「恵里奈ちゃん……」

彼は私の名を口にすると、その唇を私のそれに重ねた。

温かくて柔らかい感触が、私の唇を包む。

お付き合いを始めたばかりの頃は、ぎこちなかった口付けも、今では慣れたもので、確実に私の官能を引き出す。

唇を割入って忍び込んでくる舌を受け入れると、それは直ぐに私の舌を探り当て絡んで来る。

ゆっくりと優しい舌の動きに、もどかしさを感じながらも溺れて行く私。

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