
(仮)執事物語
第3章 極光の下で〔杜若〕
その彼がそう言ってくれるのだから、間違いはないんだろうなと思うと、嬉しくなる。
「ん…………」
私が莉玖を見つめていると、彼は身動ぎし、私に抱き付いて来た。そして彼は私の胸に顔を擦り寄せると、むにゃむにゃと口を動かした。
「ふふっ……可愛いなぁ……」
莉玖は邸で働く人達の中でも、若い方だ。一番下なのが、庭師の柳瀬さんの次男坊の歩夢君。高校に上がったと言う事で、フットマン見習いとして、学校のない時は働く様になった。
その次は、メイドとして働き始めた、速水さんの妹の詩織ちゃん。彼女も高校生だが、歩夢君よりは上の三年生。来年から本格的にメイドとして働くのだそう。
そしてその次が莉玖なのである。大学に進学して、少年と呼ばれる年代から大人の男性へと進化していく時期の莉玖。
でも、眠っている彼は、どこかあどけなさを感じる。男の人に可愛いなんて言ったら失礼かもしれないけれど、そう言う部分がある男の人の方が、私は魅力的だと思う。
そんな事を思いながら、莉玖の寝顔を見ていると、何だか私も眠くなって来た。そして、いつの間にか私も眠りの淵へと下りて行ったのだった。
