
甘く、苦く
第62章 大宮【素直に】
でも、そんな甘い一時は
ほんの一瞬で。
背中にあった体温がすっと
消える感覚。
「ニノ…」
「俺、今忙しいから。
またあとにして。」
そう言って、
ソッポを向くニノ。
…俺、なんかしたっけなぁ。
「…ねぇ、ニノ。」
「んー、あとでね。」
「お腹減った」
「それくらい自分で
作れんだろ。」
…いつもは喜んで
作ってくれるのにさ。
今日のニノは
どこかおかしい。
いつもは俺にあんなに
かまってくる癖して
俺がかまってる時は
全然反応なしじゃん。
そりゃ、俺だって
反応したくないわけじゃ
ないけど…
…あー、うん。
ニノの気持ちもわかる。
でも、さすがに
ちょっとひどくない?
「…なんかした?」
「え?」
「俺、ニノになんかしたのかなあっ。」
泣きそうになるのを堪えて
ニノの方を見た。
そしたら、
ニノも泣きそうな顔になってて
「バーカ。んなんけあるか。
…あー、もう。
翔さんの嘘つき。」
「えっ?」
「いいから、
黙ってろよ。」
ニノに引き寄せられて
甘い甘いキスをされた。
