
甘く、苦く
第73章 磁石 【move on now】session 5
「んだからさぁ、
笑いながら明日って未来の話、しよう。
鬼なんかに笑われたっていい。
…んな?
いいと思わないか?」
「うん…。うん、」
二宮の頬を撫でると
小さく笑った。
笑い出し、
笑い出したその瞳の端から
ふいに涙が零れ出す。
ぽろぽろと、止まることを知らない涙が
溢れるままに流れ流れて…
それでも二宮は笑っていた。
泣き笑いして、
二宮は嗚咽と笑みを押さえるようにして
俺のスーツに顔を押し付けて、
それでも二宮の泣き笑い声はリビングに
静かに落ちて。
俺はずっと、
そんな二宮の髪を優しく撫で続けていた。
右手はしっかりと、
最後まで握り続けられたまま。
いつまでも優しく、優しく、
撫で続けていた。
「ぁ、ふ…」
目を伏せる二宮の顎に
指を這わせ、
顔を上に傾けさせて
俺は二宮に微笑みかける。
ぴくり、と動く度に
二宮自身が質量を増す。
「ぁ、あっ…あ、」
先端に口付ければ
甘い声は大きくなり、
俺のことを掴む力も強くなる。
「…かわいーの」
耳たぶに口付ければ
また俺から視線を逸らす。
「…だめ、
こっち、ちゃんと向いて。」
顎を掴んで無理矢理向かせれば
潤んだ瞳と、欲に侵された瞳。
…あぁ。
俺、二宮のその瞳、大好きだ。
