
甘く、苦く
第69章 翔潤【near to you】
どうしたんだろう。
って思って、そろーっと
近付けば。
「…潤……?」
って小さく聞こえた声。
「っ…起きてたの?」
「ん…」
「いつ、帰ってきた…?」
「…さっき」
「そっ、かぁ…」
バクバクと胸が鳴ってる。
…目が、笑ってなくて。
どうしたんだろって
思って、名前を呼んだ。
「…翔…さ、」
「ねぇ、潤…ヤラせて」
「へ…!?」
形勢逆転されて
天井と翔さんの顔が
急に視界に入った。
何が起こったかよくわからなくて、
俺が焦ってるうちに、
もう唇は奪われていた。
「ん、はぁ、んっ…」
「はぁっ、……潤…」
いつもより、余裕のない声で
翔さんが俺の名前を呼ぶ。
それがすごい切ない声で
胸が締め付けられた。
…やだ。
なんだか翔さんが、
どこかに行ってしまう気がして。
ぎゅっと強く翔さんを
抱き締めた。
そうしたら、翔さんの腕に込められる
力が強くなって。
「…ね、潤…」
「ん…?」
「……今日は、このままでもいい…?」
「…っ!!」
さっきとは打って変わって
弱々しい翔さんの声と顔に
きゅんっときてしまった。
…いつもは甘えることなんてしない
翔さんが、こんなふうに
俺に甘えることは滅多にないから
「うん、」って言うしかなくて。
「…よかった…潤……あのね、俺…」
「うん?」
意味深な笑みを見せ、
俺の頬を包み込んでキスをした。
