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DAYS

第32章 オールリクエストshort story♡




雅紀が荷物をまとめ始めても、
立ち上がっても、出ていこうとしても

肝心の言葉が出てこない。

喉のところまで出てるのに、出てこない。



「ごめん、帰るから…。
ケーキありがとって伝えててね。」
「ちょっと待って。」


俺の制止も虚しく、
雅紀は部屋を出ていこうとする。


「待って」でもなくて、
「行くなよ」でもなくて、

俺が今しなきゃいけないこと。


立ち上がって雅紀の腕を
力いっぱい引っ張り込んで、
床に押し倒した。



「好き…。」


やっと伝えられた2文字は、震えて掠れて。

想像してたのとは全然違う、
すっげー格好悪いもので。


でも、もうそんなのは気にしてられない。

今伝えなきゃ、
雅紀との関係も、俺の気持ちも
この恋もすべてが終わってしまう。



「好き。
ずっと好きだった。

今まで…、気付かないフリしてごめん。
傷つけてごめん。


好き…。」


1度出せば止まらない。

何年も溜めてきた気持ちが
一気に溢れ出てきて…。


見つめあってからは、言葉なんて
いらなかった。

ずっと一緒にいたんだもん。


どちらからともなくしたキスは、
どんなドラマよりおとぎ話よりも

ずっと魅力的で魅惑的だ。


雅紀が俺を見る。

いつもの明るいプロフィールではない、
オスの顔をして、

「捕まえた…。」






「かれこれ捕まってから、
もう15年か…。」
「んー?
何が捕まって15年なの?」


キッチンからひょっこりと顔を出す。


「何でもないよ。

ねぇ、ご飯まだー?」
「ちょっとは手伝ってよ!」


ゲームばっかりして…って言ってるけど、
俺の世話を焼く雅紀の顔は嬉しそう。

その優しい顔は、昔から変わんない。
くしゃっとなる笑顔も、全部。


ああ…、ほんとにそういうところが、
ずっとずっとずーーっと…


「雅紀。」
「今度はなにー?」
「好きだよ。」
「え!?」
「…雅紀の作るご飯。」


不器用なりの真っ直ぐな愛、だかんな。


「好き。」
「…熱あるの?」
「…もう絶対言わない。」
「あーー!ごめん!」


-end-

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