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ポシェット

第20章 好きな場所


あなたを好きになる前に
きっとここを愛さなければならない

膝をついたコンクリート
生温かかくて
そびえ立つ人口物は
何よりも無機質で

ビル風が冷たいわ
踏みしめる度
ブーツがカツカツ音を鳴らす
土の匂いが恋しくなるの
葉の鳴る音を聴きたくなるの

ここはいったい、どこなのか
雑踏にかき消されて
自分さえ
見失ってしまいそう

長い長い坂
いつもみたく差し出される手を
握り返せない私を
あなたはどう思ったろうか

目を閉じてふと息をつけば
風の匂いさえ違うのに

二時間かけて
ようやくたどり着いたのに
随分遠くに来てしまったんだと
怖くなって振り向けば
人口的な光ばかりがギラギラと
目を焼く

ここはあなたが好きな場所
そんなことわかっているわ

都会の色に染まってもなお
変わらず私を映してくれる

ここはあなたが好きな場所

いつか二人で
生きていく場所

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