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いつまでもここに居て

第3章 本当の審議を[21]



□櫻井part□

「あ、あれ…ここは…」
目を覚ますと、目の前に智くん。

「あ、ごめんね。合鍵で入っちゃった。翔くんが心配でさ。風邪は平気?」
「あ…うん。」

よかった、とニコリと笑った。
「あれ…けど、俺、合鍵なんてあげたっけ…?」

「あれ、翔くんくれたじゃん…忘れちゃったの?」
「そ、そうだっけ。ごめん、忘れちゃってた…」

最近忘れることが多くて。

家族のプレッシャーからなかなか気を抜けない俺は、忘れそうなこととかちゃんとメモしているはずなんだ。

「あ、それにしても熱は大丈夫?」
そう言われて額をくっつけられた。

「熱ない…ね…今日はサボったの…?」
「いや、ちがう、その…」

「そんな…俺に言えない、事かな、」
「ちがくて、その、」

熱い。熱い。額をくっつけたままの所が熱くて、心臓がバクバクで、気付かないで、
こんなことバレたら、家族にも、友達にも自分の好きで好きでたまらない人も…

「言えない。」

誰かこの気持ちを言ってくれるのなら、代わりに言って欲しい。
こんな情けない自分の代わりに、どうか、どうか。
そう思った時にふっと意識がなくなった。
その視線の先に智くんの焦った顔が見えた。

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