
お嬢様♡レッスン
第123章 【番外編】執事の受難
聖地を訪れる為に、用意したと言うファッション。
チェック柄のフランネルのシャツとパーカーにジーンズ。インナーはアニメのキャラクターのTシャツ。度の入っていない黒縁の眼鏡。そしてデイ・パックにスニーカー。
テンプレートなオタク・ファッションである。今はオタクと言えども、ファッションセンスの良いオタクが居るのにも関わらず、彼が手本としたのはそのコーディネートだった。
そんなこの街に馴染んだファッションをしているイケメン・ダグラスであるのに、女性から声が掛かる事がない。
ここは秋葉原。"オタク"であるダグラスの方が、良いカモ……いや、良いお客になる筈であるにも関わらず。
フレデリクにも、ダグラスと同様の恰好をして貰えば良いのだろうか。しかし、身嗜みに煩いフレデリクの事である。絶対に嫌がるに決まっている。
白河はフレデリクを囲む人だかりの傍まで来ると、女の子達を掻き分け彼の許へと歩み寄った。
途端に沸き上がる黄色い歓声。
「やっぱり、どこかの国の王子様なんじゃない?」
「お付きも人もカッコイイ!」
「えっ⁉ 本物の執事⁉」
そんな色めき立った声が聞こえた。フレデリクよりも位の高い王子が、彼女達の後ろにポツンと立っているのに……。そう思うと白河は苦笑いを浮かべる。
何とか人払いをし、フレデリクを救出すると、自動販売機の脇で座って欠伸をしているダグラスを連れて、本日の目的地である、メイド・カフェへと彼等を案内した。
