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ネムリヒメ.

第26章 夜明け.





その分、握られた大きな手に力が込められるけれど…

それはとても冷たくて、

微かに震えてて…

切れた指先に、擦りむけた手の甲には血が滲んでいた


それがなにを意味するかだなんて、言われなくても容易に想像がつくことで…


葵くんは…


「……っ、手…借りるね」


アタシは泣きそうになるのを必死に堪えて、同じく泣きそうな顔をしている彼の手にガウンのポケットから取り出したそれを巻き付ける


そして…


「…できたよ。ちょっと不格好だけど」

「ッ…、これ…」


そう言ってアタシが葵くんの手に貼ったそれを見て、ようやく彼がぼんやりと顔をあげる


"まーったく、毎晩取っ替え引っ替えフラフラしてる葵が急に珍しく深刻な声で連絡してきたと思ったら…"

"これで葵の一生のお願いはちゃんと叶えたからね…"


それはさっき瑠美さんからもらった絆創膏だった


ねぇ、葵くん…


「…葵くんって、お姉さんがいたんだね」


アタシも人のこと言えた口じゃないんだけどね…


「ん…、ナギよりドSのね。意外でしょ」


…そんな顔しなくていいんだよ!?


「うん、瑠美さんね…」


ちゃんとわかってるから…


その大切な手を傷つけてまで、今度こそ守ろうとしてくれたんだって…



「…優しいところが、葵くんにそっくりだったよ」



──ちゃんとわかってるよ?








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