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ネムリヒメ.

第26章 夜明け.







─側にいてくれたのは聖くんと雅くんとだけじゃなかった


葵くんも、渚くんも…

側にいなくても柔らかい羽のような彼らの想いが、側にいるように何もないその場所にそっと降り積もっていく

だから会いたかった

そんなふたりの腕のなかにも帰りたいと思ったから…


たとえ…

その先になにが待っていても

扉の先が明かりのない暗闇だとしても

今なら大丈夫


今のアタシはひとりじゃないから…




だけど…

土壇場にきて、部屋のなかへ踏み込む気持ちはあってもカラダが動かなかった

石みたいに固まってしまった足が、その扉の先を拒絶するかのように前に進まなくなってしまう


「……ちーちゃん」


それを見かねたのか、聖くんからあげられたか細い声にビクリとカラダが強ばった


「ゴメン…ね……」


手を握ったまま俯く聖くん…





が、


「…ルームキー忘れた」


へ…!!?


「なっ…んでだよ!!」

「なんでって、誰がさんが望のコト起こすからでしょ!!そういうお前は持ってるワケ」

「こいつ抱えて飛び出したオレが持ってるわけねぇだろ!!」


え…と…

勃発する予期せぬこぜり合い


「はぁ…ホントお前ってツカエナイ」

「…んだと!!クソガキ」


本来なら感心できることじゃないけれど、お陰で強ばっていたカラダから一気に力が抜けていく






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