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ネムリヒメ.

第25章 Black Emperor.



しかし…


「…黙りなよ」


彼女の瞳よりもより鋭く、

怒気にまみれた物静かな視線が若葉を貫いた


「オレは弁明なんて求めてない。この期に及んで言い訳なんて百億光年早いんだけど…なんなら別な意味で泣かせて喋れなくするよ」

「……っ…」

「フッ…ははっ♪百万年の次は百億光年って…お腹イタッ」


とんでもない聖の圧力にビクリと肩をすくませ黙る若葉

そのかわりに、タピオカと戯れる望の笑い声が返ってくる


「若葉ちゃん、怒った兄さんに言われたんだって。

"お前ごときがオレに物申すのは百万年早ぇんだよ"って、仕方ないよね。あのキレ方、ガチっぽかったし」

「そう…なら、その場で魔王に犯されなかっただけ有り難く思いなよ」

「なに、それ…」


悪魔の心無い言葉に唇を噛みしめた彼女の赤い瞳を、再び透明な皮膜が覆う

しかし、けして栗色の瞳は笑わない

ただ冷たく、蔑むように彼女を見下ろすだけであった





葵の代わりにオンナたちを制圧し、カジノから飛び出した聖…

目標達成につき、あれから彼の足はまっすぐ郁と千隼のいるであろうスイートのゲストルームへ向かうはずだった


─ちーちゃん…


金曜の夜で特にごった返すカジノの人混みをかき分け、あらゆる誘惑を適当にあしらいながらやっとの思いで辿り着いたエレベーターのボタンに手を伸ばしかける

すると丁度そこで、先を急ぐ聖をまるで呼び止めるかのように、ポケットのなかで携帯電話が着信を告げたのだった





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