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ネムリヒメ.

第25章 Black Emperor.





「じゃーん♪郁くんの弁護士バッジ」


綺麗に胸元に寄せられた二つの丘の谷間から、目当てのモノを探り当てると、ようやく聖の肩から少し力が抜ける


これを見つけたところで今さら嬉しくもなんともないのだが…


「郁くん、やっぱ気付いちゃったか…」


シャンデリアにかざした指先で、あのオトコに似合わない向日葵が金色の煌めきを放つ

正義、自由、公正、平等…

郁に全く似合わない向日葵と天秤

金がくすんで見える

向日葵が可哀想だ

…謝れ!!


「さすがにわかってるなぁ…。でも、なにも似合わないからって外さなくていいのに…」


思わず聖の口元から苦い笑みが溢れる

しかし、それは郁にではなく、自分自身に向けられたもの

聖が聖自身に向けた脾肉だった


─仕掛けたつもりが、まんまとしてやられた…


ま、とにかく…


「これ…返して貰うね」

「………」


返事のない女性にそう呟く聖

ご丁寧にも下ろしたファスナーを元に戻してやる


そんな彼女は勿論、葵のオンナたちのひとりだった

聖の隣でくったりと睫毛を伏せている別な彼女も、ソファーの上で静かになっている彼女も、

さっきまであんなに激しく葵に絡み付いていた彼女たちがおとなしく睫毛を伏せている

正しく言えば、むせかえるような熱く濃艶な空気が滞留している密室で、

ひとりのオトコに快楽をもって意識を飛ばされた彼女たちがぐったりと横たわっている


…それは端から見れば異様な光景だった





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