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ネムリヒメ.

第24章  Get back.





かざしたカードキーにドアのロックが解除される

エントランスの二枚の扉を抜けて足を踏み入れると、そこは変わらないいつもの部屋だった

自分たちが常日頃から当たり前のように使っているこのゲストルーム…

リビングのテーブルの上には開けられた大量のシャンパンのボトルと飲みかけのグラス

積まれたままのチップに散らばるトランプ

そこらじゅうに各々の私物が置かれており、数時間前までここに自分たちがいたことを物語っていた

いつもと変わらない

留守にする前となにひとつ変わらない

なのになにかがおかしい

雅はどこか異様な雰囲気を肌に感じていた


と、そのとき足下になにかがぶつかった

ドレスシューズがグチャリと音をたて、その場で躓き足が止まる


「っ………!!」


自分の足を止めた物に雅は思わず目を疑った


絨毯に転がるパールホワイトのピンヒール

ロイヤルブルーのドレスに合わせたパールと同じ色の千隼の靴…

自分が選んだものだから間違えるわけがなかった


─胸騒ぎがした


嫌な予感しかしなかった

動悸が激しさを増して、息苦しさが襲ってくる

自分の鼓動がこんなに大きく聞こえたことがあっただろうか

嫌な音にしか聞こえない

耳障りだ


そんな雅の足は立ち尽くす間もなく、すでに一直線にとある場所に向いていた


ほぼフロアぶち抜きの広いスイート

バスルームもベッドも部屋もいくつもある


しかし、彼の足は迷うことはなかった






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