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ネムリヒメ.

第19章 記憶の中の摩天楼.






そこで顔を見せた綺麗な金髪の美男子が、アタシたちを見るなり思いきり表情を崩して声なき叫び声をあげる


「ちーちゃ…」


咄嗟に振り返れば、ようやくといってもいい絶妙なタイミングでアタシたちを出迎えてくれた葵くんが

形的に両手を荷物で塞がれている雅くんに思いきり抱きついている状態のアタシを見て、とんでもない表情のままフリーズしていた


「……おせーし、邪魔だバーカ」


さらには、雅くんの長い足で蹴り飛ばされ、よろめく彼はその場に崩れ落ちる


「えっ、ちょっ…!!」

「うっせぇ、お前も早く入れ」

「……!!」


玄関の二重扉の間で悶絶する葵くんを横目に雅くんに背中を押され、彼に代わってリビングへの扉を開ける


すると、


「やったぁ、オレの勝ち♪」

「っ!! またかよ…」


耳に飛び込んでくるそんな声


「…ただいま」


そう声をかけると、テーブルで盛り上がっている聖くんと渚くんが顔をあげた


「あはっ、ほーらちゃんと帰ってきた♪お帰り、ちーちゃん」

「へぇ……」


手にしているトランプをひらひらさせながらニッコリ笑う聖くんと、意味ありげに微笑む渚くん

そんなふたりを見たとたんに一気に肩の力が抜ける


「ねっ!? 雅、ちゃんとできる子だったでしょ!?」

「へ…!?」

「その様子だと泣かされてもないみたいだし♪」

「あ…う、うん」


ま…ぁ、なにもなかったわけではないんだけど…




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