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ネムリヒメ.

第18章 不機嫌な Navy Blue.





…それから、


『…ねぇ、あれって…』

『モデルの葉山雅じゃない!?』

『キャー♡アタシ、超好き…』

『アタシも…やばい、カッコいい♡』


そんな周囲からの黄色い声と…


「…おい」

「っ…!!」


上から降ってきた不機嫌な声に、今度は逆に手を引かれて我に返った


「そろそろ動いてくんねぇ!?」

「へ…」

「いちいち絡まれるのめんどくせぇんだけど…」


彼のくたびれた声に周りを見渡せば、彼の抜群な存在感に行き交う人が足を止めていた


「おら、行くぞ」

「あ、う…うん」


彼に手を引かれて慌ててその場をあとにしようと歩き出す


…が、


アタシは別にコントも漫才もするつもりはけしてないんだけれど…


「わ…ぁ!!」


なんのお約束だかわからないけれど、自分の足に躓くアタシ


「ばっ!! …か」

「っ………!!」


ボフッとカラダ同士がぶつかる音がして、柔らかい石鹸の香りに一気に包まれる


「っ──…」


目の前に雅くんのネイビーのジャケットが見えるし、痛くはないから彼が抱えてくれたんだろうけど…


「…ったく、バカかお前」


少し焦ったような彼の声と、耳元から少し早い彼の鼓動が聞こえてきて、

自分の置かれた状況にまさかと慌てて顔をあげた


「……………!!」


事故とはいえ、再び納まっているのは無論、彼の腕のなかであって

さらには唇が触れそうな距離にある雅くんの顔に思わず悲鳴が上がりそうになる




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