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ネムリヒメ.

第8章 雨.





「ちょっ…聖くんも濡れちゃうよ」


柔らかな彼の髪を温かな滴が滑り降りていく


「こっちのほうが大事」

「でも…」

「可哀想に…こんなに冷たくなって…」


まるで分け与えられるかのように、冷えきったカラダに彼の体温が伝わってきて、その温かいぬくもりに胸がキュッと苦しくなる


「痛かったよね…」


「…っ」



彼の優しい言葉に、胸がギュッと締め付けられて再び涙がこみ上げてくる



「怖かったよね…」


「っ…ん…」


聖くんは傷だらけのアタシを労るように髪をそっと撫でてくれる


「ゴメンね…」

「……っ!!」


どうして聖くんが謝るのかわからなかったけれど、その優しい声に堰をきったように涙が溢れだした




「ふぇ…っ……」




…温かいシャワーの下

声をあげながら泣き崩れたアタシを、聖くんはそれ以上なにも言わず抱きしめていてくれる

止まらない嗚咽をかきけすように温かい雨の音がしばらくバスルームに響いていた…





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