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ネムリヒメ.

第8章 雨.








「きゃっ…!!」



バシャン!!



短い悲鳴をあげながら、アタシのカラダは意図もたやすく道路にはね飛ばされる





その衝撃で手にしていた傘は吹っ飛び、バシャリと大きな水音をたてて思い切り後ろに尻餅をつきながら倒れこんだ



「っぅ……」


頭が真っ白になって何が起きたのがわからなくて、しばらく動けずにいるとじんわりと痛みがカラダじゅうに広がってくる

膝や腕に血が滲むのがわかって、段々と自分の置かれている状況を頭が理解しだした




「っ…てーな」




「…!!」


痛みと冷たさに襲われて動けないでいると、頭の上から怒気を含んだ低い声がする



その声に慌てて顔をあげると若くて背の高い男の人が、ものすごい形相で上からアタシを睨み付けていた


「っ…!!」


その鋭い目付きに心臓とカラダが萎縮する


滲み出る威圧的なオーラに圧倒されて言葉が出ない


明らかに不機嫌なその人物は、濡れた黒髪の隙間から驚くほど綺麗に整った顔が覗き


その美しい顔を怒りで歪めるが故に、見る者の恐怖心をよりいっそう煽りたてる




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