
ネムリヒメ.
第8章 雨.
「んぁ…」
やめないで…
思わずそう口から出そうになって、唇を噛み締める
彼はそんなアタシの髪をそっと撫で窓の外を指差した
「そんな顔してんな……冗談…
今ならそんなに濡れないから先に降りろ」
ぁ…そういう…こと
外に目を向けると雨脚が一時的にだいぶ弱まっていた
「…うん」
アタシが返事をしたのを確認すると、渚くんは外からまわって助手席のドアを開けてくれる
彼の手をとって車から降りると
「わっ…!!」
足元がふらついてグラッと視界が揺れた
上手く立てずにとっさに彼に手を伸ばす
「っ…ぶね」
よ、よかった…
なんとか彼に抱き止められて安心する
買ってもらった服を目の前で汚すとかシャレになんない
着ているモノに汚したくないのは当然だけど、なんかちょっとそれとは違う…理由
なんかこう、特別っていうか…なんだろ…
「ご…ごめん」
「腰砕けた!?」
「ぇ、あ…」
っていうか、サラッと言うな!!
誰のせいだと……
立てないとか恥ずかしいから勘弁してほしい
その本人といえば、あっという間に耳まで赤くなるアタシを見て笑っていた
