
凍夜
第6章 浸食
私は一人でエレベーターで1階に降りるとロビーの奥の喫煙室に入った。
「あー、煙草吸いたかった……!」
バッグからCOOLを取り出して一本口にくわえると自販機の缶コーヒーを選んだ。
飲んだ後は暖かいコーヒーが美味しい。
ちょっと一息ついてマサシに電話を入れた。
4回目のコールでマサシが出た。
「ごめんね。寝てた?」
「起きてたよ。リナ、用事済んだの?」
「うん、終ったから帰る所よ。」
「迎えに行こうか?何処にいるの?」
「大丈夫よ。もうタクシー乗るから。」
「そっか……。」
マサシの声がしゅんとした。
「あ、それからマサシ、あのね、あのワインの事なんだけど……。」
私はCOOLをもみ消した。
「私達の持ってる、あのワインって確か……?」
