
凍夜
第6章 浸食
「ちょっと!悪いんだけど彼女返してくんない?もぉいいじゃん?」
粗悪な環境のクラブのトイレの個室は、やりたい放題で、手に追えない。
「ユキ!帰るよ!」
トイレのドアを叩き、大声で呼びかける。
ヒップホップがガンガン流れるフロアーの音に私の声はかきけされそうになる。
だからドアを蹴り、「ユキ!」必死で声を張った。
その中から男が数人出てきたりする。
みんな当たり前の顔をして「るせぇよ!」通り過ぎる。
兵達が夢の後……。
そんな光景を目にすることに慣れていた。
ユキは大抵、泥酔していたからあまりよく覚えていないといつも答えた。
「ダメだよ!もっと自分を大切にして。」
私はありきたりの言葉をいつもかけた。
「なんかねー……!」
ユキはどうでもよさそうな顔をして私を遮った。
それでも私とユキは、仲良くつるんでいた。
ずっと一緒に友達でいれると思っていた。
