風景画
第6章 intermezzo 幻の風景 〜吟遊詩人 Ⅲ/Ⅴ
王は立ち上がり詩人に語る
たぎる血の色を映す声…
「星に触れるためなら
イカロスの翼でも使おう
ゼウスに命じて山も動かそう
やめよと諭され
断ち切れるものなど
恋とは言わぬ」
詩人は王を見つめたまま
リュートをしばし響かせ
言葉をのせる
「獅子を諫める言葉など
つぐみにあろうはずもなく…
ならばいっそ
王の代わりに愛の詩を
かの乙女に捧げましょう
しかしながら
七夜の後に叶わぬ時は
その玉座のもとに
お戻りを…」
しばし王は
燃える瞳で虚空を睨み
やがて目を閉じ
無言でうなずく
歩み去る重い足取りが
詩人の胸を軋ませる
(つづく)
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