風景画
第99章 poemtory 〜カウンター憧憬 Ⅳ
カウンター越しに見る窓の外は
未だ仄かに明るんで
夜のとばりを待ち受ける
愁いの時間がまだ長い…
―グレンフィディックのボトルを
入れてもらおうか
新しいボトルの封が切られ
グラスへと注がれれば
琥珀の鼓動が心にしみる
氷に絡まるその音は
夜の中へもあふれ流れる
―この音…
無性に聞きたくなる時がある
なぜだろう…?
ゆらりと揺らしたグラスから
芳香が漂う
―昔
その為だけに次々と
ボトルを開けた事もあるけれど…
昼と夜を分ける音
少しの憂いを晴らす音…
夜空の向こう あの人も
グラスに注ぐ
真紅の華やかな鼓動を
聞いているだろうか
(了)
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