テキストサイズ

少女グレイスと森の魔女

第8章 森の奥へ

57『クレアの母』


少女を追って森の中を行く男は自ら顔を叩いて自分を奮い立たせた。



クレアが町の中にいるのなら誰かしらに見つけてもらえるのだろうが、果たして森の中だったら…




私が妻と初めて出会った頃、クレアはまだ赤ん坊だった



私は彼女とクレアを愛し、時を置いて彼女も私を受け入れてくれるようになった

私にはただそれだけで十分だった


私からの結婚の申し出にも応じてくれたのだから


その時、彼女はひとつだけ条件を出した

ずっと私のそばにいて

私は「もちろんだ」とこたえた



私の妻になっても彼女はまだどこかよそよそしかったが、彼女とクレアと暮らす生活は幸せだった



しかし、クレアが成長すればするほど妻は徐々におかしくなっていった


一度など、もの凄い形相でまだ幼いクレアの首に手をかけていた時もあった



出会った頃の方がまだマシだったかもしれない



私は彼女の口から未だにはっきりとしたことは聞いていない


聞くつもりもなかった




そうだ
今わかった

私はこの森に絡んだ因縁をこの目で確かめて断ち切ってやろうというのだ

ストーリーメニュー

TOPTOPへ