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【S】―エス―01

第27章 消えない過去

 低く呻くように呟くとナイフを弄る手を止め、改めて柄を掴むと壁に向かい投げつけた。


 ナイフはヒュンッ――と一直線に空を切り、鈍い音を立てて写真の中央に突き刺さる。


 刃に射抜かれた刹那の写真を覗き込むように見据え、やがてリンは口の端をつり上げ、どこか満足げに目を細めた。


 その時、テーブルの上に置かれた携帯電話が青いランプの点滅と共に鳴る。


 立ち上がり左の壁際にあるテーブルへ歩み寄ると、携帯を手に取り番号を確認した。


 まさに直感というやつであろうか。携帯画面に表示された番号は初めて見るもので、出なくとも分かるその相手。


 携帯の通話ボタンを押し耳に当てながら、リンは小さく鼻から抜けるように息を漏らし、意味ありげにふっと口角をつり上げ、そして一言。


「……ええ。待ってたわ」




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