
【S】―エス―01
第26章 第二部‐古城の少年‐
◇
――201X年 4月3日。
「いたぞ、見つけた!」
足元で水溜まりを弾く音に混じり、男の声が響く。
「『あれ』と一緒だ!」
到底、その場所には似つかわしくない荒々しい声色が、細く長い通路に反響する。次いで複数の靴音が響き、刹那とその脇にいる齢(よわい)10ほどの少年を取り囲む。
容赦なく刹那たちに向けられる銃口。奥より現れたのは、ここの責任者らしき白衣の男。
四方を岩石で囲まれたそこは、薄暗い地下通路。人為的に設けられたその細い通路には、オレンジの照明灯と無数の監視カメラが一定間隔に設置されている。
「くっ……」
進路を塞がれたことに刹那は足を止め、小さく臍(ほぞ)を噛む。
何事もなく穏便に立ち去りたかったのだが、雰囲気から察するに易々とそうはさせてくれないようだ。
今の状況を一言で例えるなら、八方塞がりという言葉がぴったりだろう。
傍らにいた茶髪の少年が、「大丈夫?」と言わんばかりにコートの裾をぐいと引っ張る。
自分の腰より少し上までしかない背丈の少年に目線だけを送り、再び前方に視線を戻した。
「ああ。離れないで」
――201X年 4月3日。
「いたぞ、見つけた!」
足元で水溜まりを弾く音に混じり、男の声が響く。
「『あれ』と一緒だ!」
到底、その場所には似つかわしくない荒々しい声色が、細く長い通路に反響する。次いで複数の靴音が響き、刹那とその脇にいる齢(よわい)10ほどの少年を取り囲む。
容赦なく刹那たちに向けられる銃口。奥より現れたのは、ここの責任者らしき白衣の男。
四方を岩石で囲まれたそこは、薄暗い地下通路。人為的に設けられたその細い通路には、オレンジの照明灯と無数の監視カメラが一定間隔に設置されている。
「くっ……」
進路を塞がれたことに刹那は足を止め、小さく臍(ほぞ)を噛む。
何事もなく穏便に立ち去りたかったのだが、雰囲気から察するに易々とそうはさせてくれないようだ。
今の状況を一言で例えるなら、八方塞がりという言葉がぴったりだろう。
傍らにいた茶髪の少年が、「大丈夫?」と言わんばかりにコートの裾をぐいと引っ張る。
自分の腰より少し上までしかない背丈の少年に目線だけを送り、再び前方に視線を戻した。
「ああ。離れないで」
