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【S】―エス―01

第18章 影の命

 羽織っていたライトグレーのコートから別のハンカチを取り出して、手を伸ばしながら半目する。


 そして、すでに見慣れた底の知れない妖しげな笑みでそれを茜の鼻と口にあてがい言った。


「【その時】まで、しばらくおやすみ」


 それが、茜の記憶にある最後の言葉だった。


 ハンカチに染み込んだ薬品の匂いに、再び茜は意識を手放す。





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