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小春食堂【ARS】

第40章 再会【小春】

大野さんは私のことには気がついていない様子やった。

それはそうやんね。
もう10年も前に会ったきりで。

「あの時はありがとう。」

その言葉を伝えるために東京に出てきたのに、いざとなると声にならない。

きっと、私のことなんて忘れてる。
それならばいっそ、忘れたままにしたほうがきれいなのではないか。
変に蒸し返して、大野さんに嫌われたくない。

私は、黙って料理を出した。

「鱧の照り焼きか。懐かしいな。」

大野さんは、京都のことを話し出した。

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