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小春食堂【ARS】

第26章 走る走る【雅紀】

こんなことはしょっちゅう言われる。

ケンジのエリートぶりは実際すごいもので、大学に入学した時も、関東セラミックに就職した時も、会う人会う人皆が言った。

『ケンジくんすごいわね!』
『立派な息子さんを持って、ご両親も鼻が高いわね!』
『ケンジくんは、親孝行ね!』

ケンジは努力家だ。
学生の頃から勉強もしっかりやっていた。
就職してからも、語学や仕事の専門的なことをずっと勉強している。

でもさ、俺は確かに頭が悪かったから大学は行かなかったけど、高校卒業して真面目に働いてるよ?

ドライバーの仕事はきついけどその分お給料は悪くないし、毎月きちんと母さんに生活費渡してる。

ドライバーの仕事は、自分に向いてると思う。
体を動かすのが好きだし、自分で言うのも何だけど愛想いいからお客さんの受けもいい。

海外出張の多いケンジの分まで、父さん母さんのこと助けてるつもりだけど。

だけど、ケンジの方が「親孝行」なのかな…。

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