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遠距離愛

第23章 彼への想い

当然ながら、部屋には彼はいない。
「知紗…」私を呼ぶのは彼じゃない。佐江の声。

私は佐江に聞いてみる。彼はどこにいるの?って。

困ったような悲しい顔で佐江は重く口を開く
「藤木くんは…亡くなったんだよ」

私は独り言のような、佐江に伝えるかのように
ボソボソと話し始めた。

彼の奥さんになれたんだよ。彼の赤ちゃんがお腹にいて、生まれてくるのを楽しみにしていたんだよ。
なのに、私達を置いてどこかに行っちゃうなんてあり得ないよ。
だって手術して成功して退院を待つばかりで…
そうだ指輪!指輪をもらって…

だって、猛くんの奥さんになったんだよ!!
これからもずっと…一緒って…

ヤダ…嫌だよ!!嘘だよ!!佐江まで嘘つくなんて
帰って帰って!帰ってよ!!

猛くんを迎えに…
やだよ…嘘だよ…いやぁぁぁぁぁ…


その時佐江にギュッと抱きしめられた。

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