
スキをちょうだい。
第5章 亀裂ノあいだ
少し間が空いて、かなでは言った。
「ボク、航太くんがスキだよ」
突拍子もないことで、何を言われているのか理解できなかった。
航太が口を開けて、かなでをみると、彼は照れくさそうにして、言い方を変えた。
「キミのことが、スキなんだよ」
その目は、冗談を言っている様子ではなかった。
「いや、そのーー」
航太は、言葉を探して、視線をさまよわせた。
かなでとは確かに気が合うし、一緒にいて楽しいがーー恋愛対象ではなかった。
『男』だからではない。
『環』ではないからだ。
まだ、そんな判断を頼りにしている自分に呆れつつ、航太は言った。
「出雲とはトモダチでいたいな」
一瞬、かなでの表情が曇った。
しかし、彼は明るく頷いた。
「そっか。でも、うれしいよ。トモダチならまだチャンスあるもんね」
固まる航太を、かなでは笑う。
「冗談だよ」
笑いの余韻が収まってから、かなでが再び口を開いた。
