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スキをちょうだい。

第5章 亀裂ノあいだ


 じめじめした嫌な時期が終わろうとしていた。
 僅かな手がかりである【七瀬】という女子を捜す航太であったが、何故だかすれ違いが続き、結局、何の進展もないままだった。

 しかし、七瀬を捜して、校内をうろつきまわる間、ふと感じた違和感があった。

 それは、みんな静かすぎるということだった。

 あの妙な写真がもし出回っているならば、陰口や冷たい視線の一つや二つをもらってもおかしくはないはずだ。なのに、誰も航太に不快感を味あわせる者はいなかったのだ。
 
 つまり、あの写真は出回っていないということであり、となると、七瀬は一体、どこから写真を手にしたのだろうか?

 疑問と焦りが深まる中、周りの環境も変化していた。

 環とは、疎遠になって、
 代わりに、かなでと仲良くなった。

 元々、知らない仲ではなかったから、急激に距離が近くなっても不思議なことではなかった。
 それに、かなでの騒がしさは環のことを忘れさせてくれた。
 だから、ここ最近、航太は必要以上にかなでと連絡を取り合ったり、一緒にいたりすることが多かった。

 紹介した田中がすねるほどに。

 環が、嫉妬してしまうほどに。

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