テキストサイズ

スキをちょうだい。

第4章 不穏ナくうき


「ごめん、待たせた」

 航太が話しかけると、かなでは先ほどの表情から打って変わって、目を輝かせた。

「全然、だいじょうぶだよ!」

 その豹変ぶりに動揺しつつ、質問をぶつける。

「なぁ、さっきのコと何話してたんだ?」

 問われた彼は、にこりと笑って答える。

「別に。傘、貸してって言われただけ」

ーそんな感じじゃなかったけどな…‥。

 しかし、相手の言葉が嘘なのかを判断するには、材料が足りなかった。

 だから航太は特に追求せずに、続けた。

「友だち?」

「さあ?」

 相手の曖昧な返答に、さすがに食い下がろうとした航太だったが、それより先に、かなでが口を開いた。

「それより、はやく帰ろ」

 言って、さっさと歩き出すかなでを、航太は慌てて追いかけた。

 季節にしては冷たい雨が、降り続いている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ