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スキをちょうだい。

第4章 不穏ナくうき


 昼休みのチャイムが鳴る。

 授業から解放された生徒たちのざわめきで、教室や廊下が騒々しくなる。

 航太も田中と机を並べて、弁当を広げた。

「環くん」

 静かな、でもよく響く凛とした声が、環を呼んだ。

 声の主は梨恵だった。

 ストレートの黒髪に、清楚な佇まい。
 マドンナという称号に恥じない美しさだ。

 呼ばれた環は、周りがちゃかすなか、彼女の元へ向かう。

 そして、二人仲良く、廊下へと出て行った。

「いいよなぁ。あんなにかわいいカノジョがいてさ」 

 田中がパックジュースにストローを差しながら、しみじみと呟く。

「おれもあんな子にあ~んってされたい」

 あ~ん、と、口を開ける田中に、航太は箸で挟んでいたミートボールを差し出した。

「はい、あ~ん」

「お前にされたって嬉しくないけど、それはもらう」

 田中はちゃっかりと航太からおかずをもらい、美味しそうに頬張るのであった。

 それを見ながら、航太はせせら笑う。

「まあ、お前はカノジョ出来そうにないけどな」

「なっ、なにをぅ?! おれだってな、部活じゃモテモテなんだぞ!」

 反論する田中が所属しているのは、オカルト同好会である。

 彼は、普段から雑誌やグッズを持ち歩くほど、オカルトが大好きで、現在は同好会の副会長だった。

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