エスキス アムール
第64章 一方その頃
『なんだよ……うるさいなあ』
電話の向こうの光平くんは面倒臭そうに、言う。けれども、なんとなく機嫌が良さそうだ。
はいはい。
どうせ二人でイチャイチャしたんでしょーよ。
あー、羨ましい。
今に見てろよ。僕が波留くんのこと奪ってやるんだから。
イライラしていると、電話の向こうで波留くんの声が聞こえた。
寝起きみたいだ。
光平くんのやつ。
ベッドで電話とりやがったな。
あてつけか?
これはあてつけか?!
『……もしもし?矢吹?
ごめんね、俺……昨日……』
ホワンとした声色が耳に滑り込んでくる。
僕の寝たときは寝起きでもこんな声出さなかった。
……あてつけか?!
だけど、そんな声をきいてほほを緩ませる自分もいて。
さっきのイライラがスッと引いてしまった。
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