
エスキス アムール
第57章 直接対決
「…な…なんで…」
「…新聞で見たんだよ。
矢吹ほど有名な会社だったら、新聞にものるよ。」
まさか、ここで母さんのことを持ち出されるなんて思ってもみなかった。
明らかに動揺している。
だめだ、こんなことで負けるわけにいかない。
「それが、何だよ。
だから、電話したって言うのか?」
「…うん、もっと早く知ってれば会いに行けたんだけど。
とっても残念だった。葉子さん、綺麗な人だったよね」
「……っ」
「全部が…」
そうだ。
母さんは綺麗な人だった。
容姿はもちろん、心が綺麗な人だった。
一人で僕を育ててくれた。
彼女を守れるのは、僕だけだ。
母さんを守るんだ。
母さんに楽をさせてやるんだ。
その一心で会社だって立ち上げて、頑張ってきた。
なのに…、なのに。
「なんで…母さんのこと…っ」
「矢吹はさ、セミナーの頃から僕に何かと突っかかってきてたよね。
僕はキミのこと、あまり好かなかったよ。
僕にだけ、どうにも対応が違うから。」
「…」
