
エスキス アムール
第45章 困惑と介抱
大野さんがやつれ初めて2週間くらいが経った頃だろうか。
フラフラになりながらも帰っていった大野さんのあとに続き、私と高峰くんと要さんの三人でしばらく会社に残っていた。
私は描き途中だった絵がようやく完成に向かっていて、最後の仕上げをしていたために、それから何時間も描き続け、結局会社を出たのは夜中だった。
早く冬が来ないかなと思いながら、暑い空気を吸い込み、いつものようにアパートの階段をゆっくりと上っていったとき、
ドアの前に座り込んで動かない人影を見た。
こちらは物騒だし怖くなって、要さんが高峰さんに電話をしようかと思ったとき、その人がしている腕時計に見覚えがあるのを思い出した。
そうだ、高峰くんが変えたんですねっていってた。
……大野さんの時計。
じゃあ、もしかして。
慌てて近づいて、首をもたげて目を瞑ったまま微動だにしないその人の顔を覗くと、それは大野さんだったのだ。
どうしてこんなところで座り込んでいるのかも、あんなにフラフラだったのにどうやってここまで来たのかも、さっぱりわからない。
けれど、微動だにしない彼を見て、疲れきっていることは充分に理解できた。
浮かんでくる疑問は置いておいて、取り合えずありったけの力を込めて、家に引っ張り混む。
やっとの思いでベッドへ連れていき寝かせると、顔と身体を濡れタオルで拭いた。
その間も彼が起きることはなく、それから起きたのは次の日の夕方だったと思う。
その日は仕事がない土曜日だったと言うのが救いだろうと思った。
