
エスキス アムール
第42章 僕のシルシ
「それと波留と何か関係があるって思うの?」
「だってさっきの反応は…」
「そんなに気になるなら、本人に聞けばいいだろ?」
「でも、はぐらかされるだけだし」
「じゃあ波留に聞けばいいだろ?」
「……」
最もだ。
知りたいのなら、本人に聞くのが先決だ。
いくら彼女に聞いたって、教えてくれないのなら、大野さんに聞けばいい。
だけど、彼に聞いたって、はぐらかされそうな気もする。
要さんは今の一連の会話で何も教えてくれる気はないそうだ。
だけど、何かを知っていることくらいわかる。
要さんと大野さんの関係は特別だ。
家族も同然。
知らないことがあるとは思えない。
…木更津さんのことは、まだ知らないみたいだけど…。
これは特例と言っていいいだろう。
じゃなきゃあ、こんな思い立ったように二人きりにさせるために営業だなんて連れ出さないはずだ。
会社に戻ると、彼女が笑顔になっていた。
先ほどの気まずい雰囲気はどこにもない。
彼女がそうするように努めているようにも見えたが、疑い過ぎかもしれない。
彼女のことも大野さんのことも知らなすぎて、どこまで疑ったらいいのかもわからなかった。
「月曜日からはるかちゃんに、手伝ってもらうことになったから」
「え?!」
「なんだよ高峰。お前が連れてきたんだろ?」
てっきり、もうボツになったと思っていたからほとんど諦めていた。
可笑しそうに笑う大野さんに、何とも言えない感情が渦巻く。
嬉しいんだけど、わからないことが多すぎて、複雑な気持ち。
「ありがとうございます!!」
「お礼ならはるかちゃんにだろ?
受けてくれたんだから。」
そう言われて彼女に視線を送ると、彼女は恥ずかしそうに首を振ってふわりと笑った。
それを優しそうに笑って見つめる大野さんを見て、やはり何かがあると感じるけれど、確信は持てなかった。
