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エスキス アムール

第41章 思わぬ再会







「ずっとずっと、謝りたかったんです
本当にごめんなさい。謝って済むことだとは思っていません。

ごめんなさい。ごめんなさい…っごめんなさい」


「はるかちゃん…」

「ごめんなさい…っごめんなさいっ」

「はるかちゃん」



もう必死だった。
一度言葉がこぼれると、止まらなくて。
自分で自分が何を言っているのかもさっぱりわからなかった。


兎に角伝えなければ。
それしかない。


頭を下げてごめんなさいと言い続けていると、ふと、暖かいものが私の頭に触れた。

驚いてビクリとして頭をあげる。




「ごめんね、聞こえてないみたいだったから」



頭に触れたものは手だったことが見てわかった。


何度も謝り続けるのに必死で、大野さんが声をかけていてくれていたのに、気がつかなかったみたいだ。

触れられた頭の部分が異常に熱く感じた。




「はるかちゃん、俺の方こそごめんね」



大野さんは切なそうな顔をしながら、私に謝罪した。
どうして私が謝られるのかがわからない。



「俺のせいで、はるかちゃんを傷つけた。
俺は何にも分かってあげられなかった。
はるかちゃんの苦しみも、一番やりたいこともさせてあげられない。

はるかちゃんが俺と関わらなかったら、はるかちゃんはもっと幸せになれたんじゃないかなって思うんだ」



違う、違う。
必死に首を振った。


初めて大野さんが来てくれた日、
大野さんが傷を癒してくれた日、
初めて抱いてくれた日、
初めてデートした日、

お風呂上りなのに冬の夜道を走ってきてまで、好きだと伝えてくれたこと。


どれも鮮明に覚えている。
私はたくさんの幸せを、この人から貰っていた。


そう思うと、思い出すだけで、
涙がどんどん溢れて出た。



「わ、たし…わたし…っ」

「はるかちゃんは悪くないよ。
夢を叶えたい気持ちはよく分かる。
叶えるためには、何かを諦めることも大切だから。
謝らなくていい。引け目に感じることも無いよ。」









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