
エスキス アムール
第5章 苦い体験
「…え…」
「俺がずっとここにいれば、
はるかちゃんは
今日客とらなくて言い訳だよね?」
「ま、まぁそうです…。」
「じゃあ
今日は店閉まるまで居るから。
もう私服に着替えて来な?」
持っていたグラスを置かせ
諭すように言う。
「でも…。」
「ルール違反?店に怒られる?
じゃあ
俺が無理矢理そうさせたって
言えばいい。
金ならいくらでも出すよ。」
どうせ
一人暮らしで遊ぶ暇なんてない。
金なんか
腐るほどあるんだ。←腐る程はない。
彼女は
ぐらぐらと瞳を揺らしながら、
俺を見た。
まだ、
少し躊躇っているみたいだ。
「じゃあ、客の命令だよ。
私服で接客して欲しい。」
はるかちゃんは、
色々と、少々、
いや、
結構、
いや、
死ぬほど
強がった俺をじっと見つめ、
少しだけ微笑んで、
「では、お言葉に甘えて」
そう言って部屋を出て行った。
