
雪の日の空に
第1章 日常
「永橋、10部」
冊子を受け取り、返事をする前に背を向けると忙しそうに自分のデスクに戻る課長。
5年も勤めていればそのひと言だけで自分が何を頼まれたか分かる。
なんて簡単な仕事だろう。
コピー機の前で次々に刷られていく用紙の音を聞き流していた。
「永橋と課長って長年連れ添った夫婦みたいだよな。あ、これもコピー頼む。」
1年先輩の伊藤さん、いつも冗談ばかり言う人。
「やめてください、課長は妻子持ちです。私は不倫には興味がありません。…なんですか。」
笑い声を押し殺すのに必死なのか、手で顔を覆う伊藤さんを横目にコピーの終わった用紙をまとめた。
伊藤さん曰く、冗談を真面目に返す私はいじりがいがあるらしい。
事実私以外に冗談を言っている所はあまり見ない。
さらりと流せない私は不器用なのだと、美咲が言っていたっけ。
冊子を受け取り、返事をする前に背を向けると忙しそうに自分のデスクに戻る課長。
5年も勤めていればそのひと言だけで自分が何を頼まれたか分かる。
なんて簡単な仕事だろう。
コピー機の前で次々に刷られていく用紙の音を聞き流していた。
「永橋と課長って長年連れ添った夫婦みたいだよな。あ、これもコピー頼む。」
1年先輩の伊藤さん、いつも冗談ばかり言う人。
「やめてください、課長は妻子持ちです。私は不倫には興味がありません。…なんですか。」
笑い声を押し殺すのに必死なのか、手で顔を覆う伊藤さんを横目にコピーの終わった用紙をまとめた。
伊藤さん曰く、冗談を真面目に返す私はいじりがいがあるらしい。
事実私以外に冗談を言っている所はあまり見ない。
さらりと流せない私は不器用なのだと、美咲が言っていたっけ。
