言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
僕に跨った体勢のまま突然笑い出したエリカさんに、今までの心配は全部飛んで行った
依然として笑いを零すエリカさんはもうそれを隠そうともしない
「ふふふふふっ……ふふふふふふふっ」
漸く顔を上げたエリカさんの顔は、笑みの形に歪んでいる
笑みの形に『なってる』んじゃなくて
笑みの形に『歪んでる』
ホラー映画に出て来そうなほど、その顔は狂気に満ちていて
怖い
何されるんだ
同情して力を緩め、腕を固定されたのはさっき
自分の行動が悔やまれる
「悠史、本当に優しいんだから。そんなだと、悪い女に騙されちゃうわ」
今まさに、騙されたけど
話し始めた声は、意外にもいつもと変わらない
優雅な気品の漂う話し方だ
「でも大丈夫。悠史には私しかいないんだから。今後誰1人として悠史には触れないんだから」
それはずっとここに僕を監禁し続けるっていう宣言かな
それは困る、なんて少し挑発するようなこと言えない
自分の言動で自分の立場をこれ以上悪くしたくないから
「……」
「さっきの泣き真似は嘘だけど」
エリカさんは笑顔で僕に顔を近づけた
「抱いてっていう言ったのは、嘘じゃないのよ?」
女性に誘われているのに失礼なのは承知してるんだけど、背筋が凍りついた気がした
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