言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
悠史はその後数日かけて千秋に悟られないよう淡々と部屋の荷物を片付けた
その間俺たちが言葉を交わすことはなかったが、家を出る日
「…………今日、出るから」
とだけ言った
俺は返事もしなかったが、悠史はそのまま
「……」
千秋が寝静まった頃に静かに出て行った
なんでだよ
なんでお前が離れていくんだよ
千秋が傷つくの、目に見えてんだろうが
意味わかんねえ
もやもやとした気持ちがあってはなかなか寝付けず、外が明るくなるまで俺はよく眠る千秋を抱き締め続けた
次の日の朝、俺の部屋に勢いよく飛び込んで来た千秋の叫び声で俺は目を覚ました
「敦史さん!!!大変です!!!」
ドアが壁に勢いよく当たる音が部屋に響き渡る
俺に掴みかかるほどの勢いで千秋がベッドにあがってきて、俺を揺すった
「悠史さんが!!いないんです!!!!荷物もなくて……!!!!」
「ん……あぁ……」
早く起きて下さい!!!と叫ぶ千秋を落ち着けるために腕の中に引き寄せる
「落ち着けよ」
「……!」
抱きしめた千秋の身体は強張って、震えていた
「落ち着いてる場合じゃ……!!悠史さんが……!」
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