言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
電話を受けてから30分と少しした頃、家のインターフォンが鳴った
画面を確認しただけで応答はせずにエントランスのドアを開けるボタンを押す
暫くして家の前のインターフォンも鳴り千秋が鍵を開けに行くと、久しぶりに聞いた姉の声が廊下から響いた
「あら、千秋さん。お久しぶりです。うちの馬鹿2人がお世話になってます〜じゃ、おじゃましま〜す」
捲し立てられた千秋が動揺して言葉も出せない
流石
人んちにズカズカ入ってきた姉貴に続いて博秋さんも入ってきた
「ごめんね、急に。お邪魔します」
俺にも千秋にも謝り倒す博秋さんに「大丈夫です」と久しぶりの敬語で返す
「あーーー涼し……もーほんと最近の電車はどれも弱冷房車ばっかりでふざけてるわよね」
首元を手で扇いで文句ばかり言う愚姉に千秋は冷えた麦茶を持って後ろで彷徨っている
「おい」
「何よ?あっごめんなさい。ありがとう」
それでもそう言って微笑んだ姉は身内というハンデを抜きにしてもその辺の女より綺麗だ
これに騙されたんだな、博秋さん
可哀想に
暫く暑い暑いと文句を垂れた姉は完全に自分のペースで声をかけてきた
「で?」
「は?」
「悠史は?」
「あいつ今熱で寝込んでる」
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