
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
そう言って落ち込んだように俯いた千秋を微笑んだ悠史が手招きした
「千秋さん」
「はい……」
悠史の側に近づいた千秋の頭を悠史が優しい手つきで撫でる
「そんなに落ち込まないでください。僕にもわからなかったんですから。千秋さんは何も悪くありませんよ」
「悠史さん……」
目を潤ませた千秋は意を決したように拳を握った
「僕、一生懸命看病しますねっ!風邪なんてすぐに治してみせます!」
「ふふっ頼もしいですね」
首だけ起こしていた悠史は再び枕に頭を預けた
そして悠史の顔を覗き込んだ千秋の頬に触れる
その手に擦り寄る千秋に目を細めた悠史が何かを耐えるように目を瞑った
「キス……したいですが、今日は我慢ですね……。千秋さんに風邪をうつしてしまったら大変ですから」
甘え慣れやがって
俺は悠史のベッドに腰掛けた
「ならさっさと寝ろ」
「敦史冷たい」
「あぁ?俺がお前の体調不良気づいてやったんだろうが」
「そうでした」
「ったく……」
俺たちのやりとりを聞いていた千秋が笑って、悠史の額にキスをした
「早く……治して下さいね。本当に……」
「はい」
千秋の行動にまた笑顔を浮かべた悠史を置いて俺たちは部屋を後にした
