言葉で聞かせて
第8章 猫に恋敵
「おはようございます」
「おす」
僕らが挨拶しながら店の裏口から入ると、近くにいた黒服や他のホスト仲間が挨拶を返してくる
それを聞き流しながら僕は通勤途中に敦史に聞いたことを考えていた
ーー千秋が突然誘ってきたんだよ。ただ寝ようとしただけなんだけどな
寝ようとしただけで誘ってきた?
なんで?
どうして僕の時には誘ってくれなかったんだ
敦史と同じくらいの回数一緒に寝ているのに
そんなことでヤキモキしながら控え室に入ると、男性にしては高い声が遠くから聞こえて敦史が隣から消えた
消えたと思ったのは押し倒されたからで、押し倒した張本人は
「おい、どけ。流!!」
「わわっすみません!」
慌てて敦史の上からどいたのは昨日入ったばかりの森君だった
立ち上がって埃を払った敦史が少し強い口調で森君に当たる
「で?俺は何故お前に出会い頭に突進されなきゃなんねぇんだ?」
その視線にびく、と怯えた森君は、小さな声でもじもじ呟いた
「あのっ……流星さんと、その……仲良くなりたくて……ふっ……ぅ……」
敦史があまりに怖い顔をするから森君は途中で泣き出してしまう
それにしても
仲良くなりたくて?
変な子
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