春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
「…………っ」
放心したまま、動かない体。
導かれるまま、遼くんの目の前に引き寄せられて
両手を繋がれて、向かい合う形で見つめ合う。
「……遼、く……」
……いつもの、自信溢れるその瞳に
だんだんと、切なさが宿って
遼くんの悲しい表情を見るだけで、胸が痛くなる。
「……どうして……?」
「………」
「遼くん、どうして此処に来たの……?」
震えてるのは、私じゃなくて
私の手を握り締める、遼くんの手だ。
「……春菜」
私の質問に、答える代わりに
遼くんの腕が、背中に回って
私の体をそっと包み込む。
「……春菜、ごめんな」
「………!」
消えそうな、掠れた声。
対照的に、更に強い力で抱きしめられた。
「……ごめん」
「………っ」
「……少しだけ……
このままで……」
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える