春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
……まさか
遼くん以外の人から
ユキの口から
遼くんの奥さんの話を聞くなんて、夢にも思わなくて
ホットコーヒーを持つ手が、カタカタと振動してしまう。
「俺の姉貴、昔からぶっ飛んでる人でさ。
辛うじて高校は卒業したけど
女のくせにバックパッカーで、1人で色んな国に行きまくってたんだ」
「………」
「父親の仕事の影響で、小さい頃に世界中を飛び回ってたらしいから。
俺が生まれてからは、日本に落ち着いたんだけど」
思い出をそっと取り出すように、ゆっくりと話すユキ。
新緑の葉の、さわさわと重なり合う音と連動する。
「忘れもしない、中学1年の修了式の日。
数ヶ月姿を見せてなかった姉貴が、突然男を連れて戻って来てさ。
いきなり俺と親の前で、結婚するって言いだして」
「………!」
「あの時、マジで3人でひっくり返ったからね。
……6年前の3月、もう桜が開花し始めてた」
「………っ」
……ドクンと、心臓が跳ねた。
その年の、その季節
私も、遼くんから同じ言葉を聞いたから……
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