春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第12章 春の嵐
「すごいねー風。
吹き飛ばされそうな勢いだな」
今日は、4月最後の週末。
お昼過ぎのこの時間、ニット1枚で出歩けるくらい暖かいけど
天気予報で注意報が出ているだけあって、強風が吹き荒れている。
「行こ、春ちゃん」
「………!」
「……あ」
歩き出そうとしたユキと私の
止まったタイミングが一緒だった。
……差し出されたユキの左手に、重ねようとした私の右手。
「……はは、癖って怖いね」
「………っ」
……ダメって言ってるのに、ユキはいつもくっついて歩こうとするから
その根気に負けて、水族館ではずっと手を繋いでいたんだ。
……私、何考えてるんだろう。
振り返る女の子達に、勝手に嫉妬したり
当たり前のように、触れようとしたり
そんな恋人みたいな……資格なんてないのに……
「少し、歩くから。
俺を風避けにして、付いてきてね」
切なく微笑んで、ユキはパーカーのポケットへと手を戻した。
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