春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第9章 その時が来るまで
「ユキって本当に器用だよね」
「そう?」
「手付きとか、仕草とか……無駄がなくて綺麗っていうか……」
「はは、面白いこと言うね」
「本当よ? 女の私よりよっぽど……」
そこまで言いかけて、春ちゃんがピタッと止まる。
俺の手を覗きこむあまり、距離がいつの間にか近付いていて
顔を上げた春ちゃんと、10センチほどの間隔でバチッと目が合った。
「わ、ご、ごめ……っ」
「ねぇ春ちゃん」
「な、何!?」
解き終わったコードをそのまま床に捨てて、春ちゃんの肩に左腕を回す。
……ちっちぇえ体。
俺も大概細いけど、春ちゃんは腕の中にすっぽり収まってしまう。
「……っ 離して……?」
「離しません」
しゃがんだまま引き寄せた肩が、細かく震えてる。
密着した体に、春ちゃんの鼓動が伝わってきて
……ヤバイですけど。
見た目もそうだし、この人本当に7つも年上なわけ?
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